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半泥子・廣永窯
川喜多半泥子作品に出会ったのは随分以前のことです。平成に入って間もなくの頃だったでしょうか。大阪・中之島・東洋陶磁美術館の企画展での事でした。
彼は百五銀行の頭取と言う財界の人でした。仕事以外の時間は全て陶芸に注ぎ、私の知る限り、作品は抹茶椀がほぼ占めていたと思います。お売りする事はなかったとの事ですが、その力量、圧倒的な存在感を驚きと感動の中で拝見させていただいたことを忘れる事がで出来ません。
そしてたぐい稀な土との暮らし、そして生きる姿が美しい…と知ったのです。
それからしばらくして坪島土平氏が窯を継承していることを知り、その足で、三重県津の廣永窯へ出向きました。
その窯場は、ただならぬ美意識で包まれた、広大な自然と共にある佇まいでした。
坪島土平氏は50歳くらいだったでしょうか。彼のお弟子さん達が数人いらっしゃいました。私は店を始めたばかりの頃で、自分自身が確立出来ていない不安定な中で、ご縁をつながないまま年月が過ぎ去り、折につけ思いを巡らせる日々の状態でした。
いろいろ不思議なご縁に引きつけられるように、突然と偶然が重なって、再びよみがえったのです。
坪島土平氏はお亡くなりになっていましたが、その弟子の藤村州二氏を含む数人で窯場も作品の面影も受け継いでいらっしゃいました。
長い変還を経て2018年(平成30年) 12月の「半泥子・廣永窯」展示会をさせていただきました。
赤絵・染付・織部・志野・そして灰釉の器は伝統と格式を備え、私達の感性に響くのです。すべては「目と心」で作られる事を知るのです。
その後、常設と言う形で作品を頂きに、津市の窯場まで足を運んでいます。清澄な空気と、木々を揺らす風の中で、いつも私は、先人達の偉大さを、そしてすぎ川喜多半泥子の姿を見てしまうのです。